2017/06/02-03 初めてのロングライド、軽井沢(東京~横川~碓氷峠~軽井沢~美ヶ原~松本)
軽井沢にチャリで行こう、突然そう思い立った。
【初めてのソロロングライド】
大学2年の初夏、ロードバイクに乗り始めておよそ1年が経ち、近場で行ける場所に飽き始めていた。2年生になって学部の授業も少し落ち着き、金曜日が全休であることを利用して金土曜日を使って少し無謀なロングライドをしてみたくなった。そこで真っ先に思い浮かんだのは碓氷峠である。毎年夏に軽井沢に行っていたので、軽井沢の手前に碓氷峠という峠があり、廃線跡があることも知っていたのでかねてより行ってみたい場所であった。宿については、軽井沢にある祖母の別荘を借りれば問題なかったので、初めての1人ロングライドには最適に思えた。着いてからは軽井沢周辺を軽く観光してからまた峠を下ればいい感じになりそうだった。
しかし、計画を立て始めてみると、「碓氷峠を登って軽井沢に行くだけでは物足りないのではないか…?」という頭の悪い考えが浮かんだ。確かに、住んでいる祖母の家から軽井沢までは160kmほどで、1日掛けて碓氷峠を登って、また降りて帰ってくるだけでは少し味気ない。そこで、軽井沢から先に行ってみるのも良いと考え、いい感じの道がないか調べてみたら、「美ヶ原」といういかにも景色の良さそうな名前の高原を発見した。ここに行こう!ルートを引いてみたら美ヶ原を通って松本に抜けると、2日合計で260kmとちょうど良く思えたので、美ヶ原に行ってみることにした。獲得標高は3,000mとなかなか楽しい感じになっていたが、気にせず行ってみることにした。
【夜中の出発、そして雨】
2日目の美ヶ原に余裕をもって臨みたい事や、家から軽井沢までのほうが長かった事から、金曜の午前零時に出発した。まずは北上し、埼玉に入ってから北西に進み高崎を目指した。埼玉までは何度か行ったことがあったので難なく進むことが出来たが、如何せんトラックが多いことや道があまり良くないことで無駄に疲れとストレスが溜まってしまった。(これ以降、ロングライドをする際は極力埼玉は輪行してスキップすることが多くなった。)出発してから3時間、少し疲れ始めた私に悪夢が襲う。雨だ。唐突に振り出したかと思うと一気に強くなり、私の疲れた体を急激に冷やし始めた。仮眠をとったとはいえ圧倒的に睡眠が足りなかったこと、この後碓氷峠や翌日の美ヶ原のヒルクライムが控えていたことなどを考慮して一旦コンビニに避難することにした。タイムロスは痛かったが、時間には十分余裕があったため、焦らず休憩もしつつ雨が過ぎるのを待った。
待ち続けて1時間、ついに雨脚が弱まってきたので再度高崎を目指して走り始めた。思ったより足止めされてしまったが、焦って走っても疲れるだけなのでペースを乱さず走ることに専念した。そして4時半ごろ、遂に空が明るくなりはじめ、弱っていた心も少し回復し、取り敢えず高崎に到着した。朝食を食べて一度長めの休憩を取ろうと思ったが、朝早すぎたせいでどこの店もやっていない…空腹と疲れで限界になりながらなんとか空いている吉野家を発見した。おそらくこの時食べた牛丼が私史上最も美味い吉野家だったのではないか。
軽く仮眠も取ってから、8時ごろに高崎を出発した。この日はここからが本番のヒルクライムだ。まずは横川あたりまでは緩い登りなのだが、これが案外疲れる。平地に見えるのに20km/hくらいしか出ず、焦ってペダルを回すのに無駄に力が入って体力を持っていかれる。こまめに休憩を挟みながら、横川に着いた。補給をしてから遂に碓氷峠に挑む。
もう疲れ果てていたと思っていたが、登り始めると楽しい、足が回る、疲れを感じない。なんだこれ?寝不足の深夜テンションとゴールが近いことで感覚がぶっ壊れたのか、面白いように進む。楽しい、ヒルクライム楽しいぞ。碓氷峠はちょうど初夏の新緑に包まれていて、登りも楽しく最高だった。少し進むと眼鏡橋の案内が出始め、道の傍らには鉄道の跡が現れ始めた。1か所立ち入ることが出来たので入ってみると、緑の中にトンネルがいくつも連なっており、非常に雰囲気のある場所だった。これはいい。自転車を入れての写真撮影にもってこいだ。夢中になって色々な場所や構図を試してみて、気づいたら1時間くらい経っていた。腹も減っていたので携帯していた羊羹を食べてラストスパートをかける。碓氷峠は斜度がそこまできつくはないので、時にダンシングしながら進むと程よい強度でスピードも出てとても楽しい。見たかった眼鏡橋も橋の上と下の2か所から満喫した。
そして碓氷峠を抜けて、遂に軽井沢に到着した。雨で足止めを食らったとはいえ、12時間もかかるとは想定外だったが、何の問題もなく走破できたのでよしとしよう。
【軽井沢】
中軽井沢まで行ってから好きな蕎麦屋「かぎもとや」に行き、絶品のそばとけんちん汁を頂いてから近くの温泉に使った。ロングライドを終えた後の温泉で、疲れが溶け出していって体がほぐれる感覚は堪らない。出た後にはコーヒー牛乳をキメてから本日の宿である祖母の別荘に向かった。別荘に着くなり、さわやかな風と暖かい陽の光に包まれて最高に幸せな気分に浸りながら、そのまま眠りについた。
母からの鬼のようなLINEの通知で目を覚ますと、もう夜の11時だった。これから外に行ってもコンビニくらいしかやっていないので、冷凍庫に放置されていたラザニアを食べて、母に無事であることを伝えて再び眠りについた。
【2日目、美ヶ原へ】
朝6時、まだ寒いがウルトラライトダウンを着て出発。まず始めの下りで体が死ぬほど冷やされる。寒い。電光掲示板を見ると、気温は5℃。そりゃ寒いわけだ。当時は指ぬきグローブしか持っていなかったので指が千切れるほど冷たかった。下りきった小諸にあるセブンで朝食と補給食を調達していざ登りへ突入。序盤はしなの鉄道に沿って上田付近まで登る。途中少し道を逸れると初夏の田んぼが広がっておりとても気持ちが良かった。そこから国道18号を外れて国道152号、県道62号を経て本格的なヒルクライムに突入する。この時点ですでに小諸から500mほど登っていたが、ここからさらに1,000m近く登るらしい。果たして耐えられるのか。
【ぼっちヒルクライムという喜び】
ここからは平均斜度7%が12km続くゴリゴリのヒルクライムだ。少し休憩してから県道62号を離れて県道464号を進み始める。ここまで既に500m登り、昨日からの走行距離は200kmを超えていて、登り始める前は絶望を感じていたが、登り始めるとよく分からないくらいに調子が良い。どんどん足が回る。全然疲れない。なんだこれ?驚くほど快調に進んでいく。流石に途中空腹を覚えたので買っておいた羊羹を食べつつ少し休憩して再び進み始める。先ほどよりさらに調子が良くなったと感じる。凄い。楽しい。昨日の碓氷峠といい、登りが全く苦にならない。楽しいぞ。出発する前はぼっちで登りなんて辛いだろうなんて思っていたが全然そんなこと無かった。斜度に合わせて自分の好きなペースで走れるし、好きなタイミングで休憩できるし、とても走りやすい。これはいいぞ。登り楽しい。こんな調子で登っていたら今まで視界を遮っていた森がひらけて一気に景色が様変わりした。頂上だ。
【美ヶ原】
ついに美ヶ原に到着した。美しい、名前に違わず美しかった。森に囲まれて閉塞感のあるヒルクライムから一転、遮るものが何もない頂上をのんびり走る爽快感が堪らない。景色を楽しみながら道の駅「美ヶ原」を目指す。
道の駅ではコロッケやらサイダーやら売っていたので、頂上到達記念ということで欲しいものを好きなだけ買って豪遊した。道の駅らしく、長野の名物などがたくさん売っており、今更ながら自転車だけで東京から長野まで走ってきた実感が沸いてきた。信州りんごサイダー片手に駐車場から景色をボーっと眺める。本当に景色が美しい。少し雲が出ていたが、雲の濃淡がまた美しく、山の緑と空の青、雲の白が織り成す景色はいつまでも見ていられる気がした。
実際にいつまでも見ていたかったがそういう訳にもいかないので十分に休憩が取れてから道の駅を後にした。休憩をして疲れが出てきたのか、早く温泉に入りたくなってきた。道の駅を出るとき、何やら大量の似たような車が道の駅に集結し始めていた。どうやらこの後コペンのオフ会があったらしく、駐車場がいっぱいになるまでコペンが集結していた。
【下り、そして温泉へ】
昨日から累計で獲得標高3,000mを達成し、あとは下るだけだ。疲れが溜まっていたので、安全第一の超チキンダウンヒルでのんびり下った。登るのにはあんなに時間がかかったのに、標高2,000mから500mまで下るのは一瞬だった。下り終盤の、坂の先に松本の町がわずかに見える場所がとても良かった。下ってスピードが出ていたがわざわざ止まってたくさん写真を撮った。
下り終わってからは少し北に向かって浅間温泉というところに。どうやら温泉街らしくいくつも温泉があったので、適当にいい感じのところを見つけてついに待ちに待った温泉を堪能した。出た後はもちろんコーヒー牛乳。休憩所でたんまり休憩してから、最終地点である松本駅を目指す。温泉を出た後で汗をかきたくなかったので、めちゃくちゃのんびり走った。温泉出た後の弛緩した身体でのんびり自転車漕ぐの良い。もうほとんどゴールしたも同然で後は帰るだけだ。5kmほどのウィニングランを終えて遂に松本駅に到着した。2日間で250km3000mアップを走り切った。初めにルートを組んだ時は行けるか不安でも案外何とかなるものだというのを学んだ。
さあ松本についてゴールだとめでたい気分であったが、ここからが地獄だった。特急を使うことなど考えておらず、鈍行で5時間かけて吉祥寺まで行かなくてはならなかった。このときの輪行は寝ていたせいかほとんど覚えていないが辛かったということだけは覚えている。これ以降、長距離の輪行をする際は出来るだけ新幹線や特急を使って、多少高くなったとしても快適さを重視するようになった。吉祥寺についてから最後家に着くまで10kmほど走り、この旅は無事終了した。